田園2023年07月号 巻頭言
田園2023年07月号 巻頭言
故トマス小平正寿神父 追悼のご挨拶
主任司祭 ドミニコ竹内正美
5月23日は朝からの雨にもかかわらず、多くの信徒の皆さんが兄弟トマス小平正寿神父様の葬儀・告別式にご参列頂き本当にありがとうございました。
何時かは別れる時が来るとは分かっていても死は悲しいものです。死は全ての交わりを断ってしまいます。親しい人との交わりを断ってしまいます。ここに憂い、嘆き、悲しみがあります。
兄弟トマス小平正寿神父様は79年間の生涯を終えて神様の御許へ旅立たれました。今は神様の御許で永遠の命の喜びに与かっていることでしょう。
トマス小平正寿神父様の略歴をご紹介致します。
1944年3月24日
東京都世田谷区に誕生。
1962年
暁星高校卒業。在学中、フランス大使のアルマン・ベラール氏より
フランス語最優秀賞をいただく。
1967年3月21日
着衣式
1968年3月22日
初誓願式
1971年3月28日
荘厳誓願式
1974年12月21日
司祭叙階式
1978年
ローマ教皇庁立アントニアーヌム大学院卒業。
論文:「カトリック教会法と日本国民法に於ける婚姻法の比較」
1981~1983年
北浦和修練院で修練者にラテン語を教える。
1983~2000年
中目黒教会で司牧。
1983~1996年
在世フランシスコ会南関東地区総補佐司祭。
1996~2014年
三軒茶屋教会で司牧と六本木本部修道院にて翻訳の仕事。
他、癒しのミサ担当。
2014年6月より
田園調布教会の協力司祭として働き、
レジオ・マリエの指導司祭として、また、エクレシア・アンサンブルの
指導司祭としても働いておられました。
信徒の皆さんの霊的指導も行っていました。
帰天までの最後の日々について、
今年の2月頃、小腸検査の際、腹部動脈瘤が発見され、3月に手術のため入院しましたが、手術後の検査で食道に小さい腫瘍が見つかり転移と診断され、通院のかたちで抗がん剤治療を開始しました。
しかし退院後一回目の抗がん剤治療後、のどの痛みを訴え食事が取れない状態に急変、入院とともに放射線治療を開始しましたが、その時、数日の間に食道の腫瘍が急激に成長し手術は難しい、点滴による栄養の供給で体力を維持しながら放射線治療を継続すると主治医の先生から診断をうけました。
何日もたたないうちに病院から肺炎で危険な状況であるとの連絡があり、何とか持ち直しましたが、原因はがんの全身転移ということで、今後の治療は無意味であるとの説明を受けました。
4月7日に兄弟トマス小平正寿神父様は緩和ケア専門病棟のある病院に転院しました。
緩和ケア専門病棟は一般病棟と違って、全く緊張感のない明るい雰囲気で、できる限り入院中の方の希望をかなえようとしてくださり、そのような雰囲気のなかで、兄弟トマス小平正寿神父様は自分の生涯の記憶をたどりながら一つ一つのできごとや経験を私たちに話しながら小さき兄弟としての召命の完成に少しずつ向かい始めました。
緩和ケア病棟で一ケ月あまり過ごした兄弟トマス小平正寿神父様は徐々に衰弱、5月10日ごろから発熱と呼吸不全の状態が続き、管区長と共に病者の塗油の秘跡を行いました。
最後の面会は5月17日(水)でした。全く食べられない状態でしたが、卵焼きの風味について話しながら懐かしがっていた兄弟トマス小平正寿神父様のために、二種類の卵焼きを作ってもらって面会に行きました。衰弱して会話すらできなくなっていましたが、意識はしっかりしていて私たちに何かを話そうとしていました。うまく話せない状況がしばらく続いた後、兄弟トマス小平正寿神父様は数分間私たちの手をとって何かを伝えようとしました。口の動きから考えてみたら、おそらく「ありがとう」と話し続けている様子でした。
それから聖フランシスコの祈りを読んであげますか、と尋ねてみたら、うなずかれたので聖フランシスコのダミアノ教会の十字架の前での祈りをゆっくり読み上げました。
二日後の5月19日、06時15分ごろ呼吸が止ったとの連絡を受け、兄弟トマス小平正寿神父様の元にかけつけました。呼吸は止まったまま、とても穏やかな表情でした。私たちは主治医が死亡を宣言するまでの間、師父聖フランシスコの遺言を読み上げました。
08時57分、主治医から死亡が宣言され、兄弟トマス小平正寿神父様は完全な喜びに結ばれた小さき兄弟、完全なフランシスカンとして天の国での誕生を迎えました。
トマス小平正寿神父様は温厚な方で、信徒の皆さんからも大変に慕われていました。
とても真面目な顔をして、人々を笑わせるのが得意な方でした。約10年間カトリック田園調布教会の協力司祭として働かれた兄弟トマス小平正寿神父様は貴重な存在感を信徒の皆さんに印象付けたことと思います。
皆さんのお祈りの中で、兄弟トマス小平正寿神父様を思い起して頂けたら幸いです。
本当にありがとうございました。
※ 「田園」2023年7月号はこちらからご覧ください。