田園2017年3月号 巻頭言
田園2017年3月号 巻頭言
バレンタインデー
協力司祭トマス小平正寿神父
昔、ローマにバレンタインという修道者がおりました。とても熱心な信仰の厚い人で神様の喜ばれることをしたいといつも考えていました。
ほかの修道者たちは絵がうまかったり、彫刻ができたり、美しい声で歌を歌ったりしてイエス様を賛美していました。
しかし、バレンタインだけは何一つ上手にすることができませんでした。「私はこんなに神様を愛しているのに神様のために何もすることができない」と嘆いていました。
悲しい気持ちで祈っているとき、突然小さな声が聞こえてきました。「あなたにできることをしなさい。神様がそれをお望みです」。「私にできることって何でしょうか」とバレンタインはすぐに尋ねました。しかし答えは聞こえてきませんでした。そこでバレンタインは一生懸命に考えました。そしてついに決心しました。
「そうだ。私は毎日人々へ“愛の言葉”を送ろう。手紙を書いたり、小さな花束や果物を送ってあげよう。イエス様がなさったように、悲しんでいる人や、寂しがっている人、一人ぼっちの人に、神様の気持ち、愛を伝えよう」。
来る日も、来る日もバレンタインは「愛の言葉」を人々に送り続けました。そしてとうとう、バレンタインは国中の人々に「愛を伝える人」として、知られるようになりました。バレンタインから「愛の言葉」を受けた人は、神様がどんなに愛してくださっているかを知りました。そしてとても明るい元気な人になりました。しかし、たった一人バレンタインをとても憎んでいる人がおりました。それは王様でした。王様は自分よりも、バレンタインがみんなに好かれていることを知って、腹を立てました。そして家来に命令してバレンタインをつかまえさせ、牢屋に入れました。
ところが、ある日バレンタインのいる牢屋に、ハトが飛んできました。そのくちばしには、ハートの形をした葉っぱがくわえられていました。バレンタインはハトの落としたハートの形をした葉っぱを拾ってそこに羽のペンで「愛の言葉」を書きました。ハトはその葉っぱをくわえると、バレンタインの友達のところへ運びました。
やがて王様は亡くなり、バレンタインは牢屋からでることができました。そしてまた人々に手紙や花束や果物を送って「愛の言葉」を伝えました。
バレンタインが死んだとき、人々は大変悲しみました。そしてバレンタインが神様の愛を伝える立派な働きをしたことに人々は感心して、“聖バレンタイン”と呼び始めました。毎年、聖バレンタインの祝日が来ると、人々は聖バレンタインが「愛の言葉」を送ってくださったことを思い出し、その日には人々も「愛の言葉」を送りあうようになったのです。こうして2月14日が聖バレンタインの日としてお祝いされるようになりました。