田園2022年7月号 巻頭言

田園2022年7月号 巻頭言

「新しいミサの式次第の変更箇所」

アウグストヌス桑田 拓治

 

 20221127日待降節第一主日から現行のミサ典書に変わって新しく改訂されたミサ典書を使用することになります。今回の巻頭言ではその背景について書きたいと思います。

第二ヴァチカン公会議の後、トレント公会議から400年間使われてきたミサ典書が刷新されることとなり、1970年「ローマ・ミサ典礼書」のラテン語規範版の初版が出されました。この規範版は19752002年と2回改訂されています。第二版はマイナーチェンジであり、第三版では新しく列聖された聖人達のミサ祈願文、色々な機会におけるミサの祈願文が追加されました。現在日本で使われているミサ典書は1975年第二版の暫定訳にあたります。今回改訂される日本語のミサ典書は2002年の第三版に基づいた翻訳になっています。ミサ典書の翻訳に関しては教皇庁典礼秘跡省の認証を受ける必要があります。2021523日聖霊降臨の祭日に典礼秘跡省から、「ミサの式次第と第一~第四奉献文」「ミサの結びの祝福と会衆のための祈願」「水の祝福と灌水式」の認証を受けることが出来ました。しかし、「公式祈願」「叙唱」「入祭唱」「拝領唱」の改訂作業は終わっていません。従って、1127日待降節第一主日からは認証を受けた式次第に従い、認証を受けていない部分は現行の祈願文を用いることになります。カトリック中央協議会に問い合わせたところ、以上のことを踏まえた上での「司式者儀式書」の出版は9月頃を目指して準備中とのことでした。正式なミサ典礼書の出版は全文の認証を受けてからのことになるとのことでした。

第二版と第三版においてミサの中心部分の改訂があったわけではないので、今回の改訂版は基本的に翻訳の見直しであると言えます。翻訳において難しいのはラテン語の単語と日本語の単語が一対一対応になっておらず、単語の意味する範囲のずれが存在していることです。ミサの式次第の言葉が変わったとしてもミサの本質が変わったことではありません。常にミサは祭壇を中心とした聖体祭儀であり、感謝の祭儀です。その意味では新しい翻訳になれる必要があると思います。天使祝詞からアヴェ・マリアの祈りへの移行の時の戸惑いを思い出しますが、繰り返し祈るうちにその祈りを自らのものと出来ていったのも事実だと思います。

現在はコロナ感染防止の観点からミサの中での応唱は心の中で唱えることになっています。1127日の時点でのコロナ対策がどうなっているかは分かりませんが、司祭と先唱者との応唱に耳を傾け改訂されたミサの応唱の言葉を心に染みこませていくことが大切だと思います。繰り返しになりますが、ミサの本質に変わりが無いことを心に留めて下さい。

 

※ 「田園」2022年7月号はこちらからご覧ください。

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