田園2020年3月号 巻頭言

田園2020年3月号 巻頭言

 

四旬節、恵の時

助任司祭 アウグストヌス桑田拓治神父

カトリックの典社暦に於いて、主の顕現秘儀(主の御降誕、公現、主の洗礼)を記念する降誕節とその準備の季節である待降節があり、また主の過越秘儀(主の受難、復活、
昇天)を記念する復活節とその準備の季節である四旬節の4つの季節があります。
今年は2月26日の「灰の水曜日」から四旬節を迎え、4月12日の復活の生口を迎える準備の季節に入っています。主の御降誕がローマ太陽暦の冬至を起源として12月25日に固定されているのに対して、ユダヤ教の過越祭を起源としている復活祭は太陰暦に基づいているため太陽暦ではその年によって移動することになります,復活の主日は春分の次の満月後の一番近い日曜日です。

四旬節には洗礼志願者のためと信者のための二つの側面があります。洗礼志願者にとっては復活徹夜祭に洗礼を受けるための最終準備の期間です。
洗礼志願式に始まり、四旬節の典礼を通して、また代父母や信者に支えられて祈りと回心のうちに洗礼直前の識別の時を過ごすのです,
すでに洗礼を受けている信者は四旬節の典礼に洗礼志願者と共に参加することで、自らの洗礼の恵を再確認し、主の御復活を迎える準備をするのです。
こうした準備を回心の時と意味づけることが出来るとおもいます。回心の時をというと日常の生活に於いて自らの足りなかったところや誤りを悔い改める時と捉えるかもしれません。
しかし私たちは改心しても改心しても、相変わらず同じ過ちを犯す弱い自分のことを経験的によく知っているのではないでしょうか。

私はある霊的指導者から四旬節の期間、一日の終わりにその日の出来事を振り返るように勧められたことがあります。
しかし反省点を見つけるのではなく、その日の出来事で嬉しかったことや神様に感謝したいことを見つけるようにと言われたのです。

確かに私たちは感謝と喜びのうちにあるとき他者に対して優しく寛容に振る舞うことが出来るのです。しかし、これはやってみると意外と難しいことに気づかされるのです。
私たちの心は神様の恵みに慣れてしまい、感謝することを忘れた堅い心になっているのではないでしょうか。
回心の時とは見落としていた恵みに気づき、感謝するしなやかな心を取り戻す恵の時のことなのです。

頂いた信仰の恵みに感謝して、感謝と喜びの心で主の御復活をお迎えしましょう。

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