田園2015年2月号 巻頭言

田園2015年2月号 巻頭言 2015年が良い年となりますように

協力司祭 トマスーダーコリ小平正寿神父

 

新たな年を迎えてはや二月を迎えました。昔から一月はいぬる、二月は逃げる、三月は去ると言われるぐらい最初の三ケ月は早く過ぎ去る感じがします。この原稿を頼まれて書き終えたのは主の洗礼の主日の一月十一日でした。同時に偶然にも私の修道名の聖トマス・ダ・コリの祝日でもありました。それで簡単にこの聖人について述べてみたいと思います。

 

トマスはイタリア中部のコリに生まれました。敬虔な両親に育てられましたが、はや十四歳で孤児となります。妹が二人おりました。トマスは小さい頃からフランシスコ会に入りたいと思っていましたが、妹たちを幸せな結婚に導くまでは一生懸命働こうと決心したのです。やれる仕事は何でもしました。特に羊飼いの仕事か好きでした。それは丘の上にイエスとマリアを祀った小聖堂があったからです。一日の仕事が終わると決まってここにやってきて自分の望みが叶うように熱心に祈っていたのです。

 

やがて無事に妹たちを嫁かせたあと、コリから300キロはあると思われるローマの管区本部まで歩いて行きました。修道院の門を叩き出てきたフランシスコ会士に言いました。「わたしは聖人になるためにやってきました」と。 長い勉強の期間を終えてトマスは司祭に叙階されるとすぐ修練長として派遣されました。しかしそこに彼の本当の使命はありませんでした。まもなくスプヤコ近くのベッレグラ修道院に送られます。そこでローマ管区最初のリティロの創立者になり亡くなるまでずっとそこの院長としてとどまりました。

 

彼の特徴は愛徳・謙遜・自己卑下・沈黙・平和の促進・観想への愛・神の御摂理への信頼・司牧への熱心さであり生きた福音そのものになったのです。

 

彼の生涯には不思議な出来事かたくさんあり、本となっていますが今日はその中のひとつだけご紹介しましょう。人里離れたベッレグラ修道院の生活の中で冬は厳しいものかありました。ある年の冬は連日雪が降り、街に買い物にも行けない状態でした。そんな日か続くある夜のこと、台所係の修道士はあわてふためいてトマス院長のところに来て言いました。「バンがひとつもありません。あしたの朝食に一個もありません。兄弟たちに申し訳ない。どうしたらいいでしょう!?」トマスは言いました。「大丈夫、心配しないで。あすの朝誰よりも早く起きて一緒にパンを買いに行きましょう」。院長のこの言葉に修道士は励まされて床につきました。さてまだ暗いうちに二人は起きて街に出かけるためにハピトの上にマントを着て外に出ようと台所側の戸を開けようとしましたがビクともしません。雪がだいぶ積もったと、二人とも思いました。力を込めて少しづつ開けていきました。しかし扉を抑えていたのは雪ではなくいくつもの大きな袋に山ほど入ったパンの山でした。二人はその場にひざまづき、慈しみ深い神の御業に感謝したのです。 あとで分かったことですが、このバンの山は日頃の修道者たちの素晴らしい模範と司牧に対する村人たちの感謝の気持ちだったのです。

 

トマス・ダ・コリは一六五五年に生まれ、一七二九年に天に召されました。死後まもなく福者になりました。そして一九九九年十一月二十一日に当時の教皇ョハネ・パウロニ世によって聖人の列に加えられました。わたしか教皇様の招待を受けたのはそのIケ月後のことでした。聖トマスの取次があったに違いないと思わないではいられませんでした。

 

聖トマスは英雄的な強い聖人というよりも多くの人の祈りに支えられて自分の弱さを克服していった方のように思われます。弱い人間の中に神の力が輝きでたのです。神に感謝!

 

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